成人患者への持続脳波モニタリング 第13章 頭蓋内圧が脳波に及ぼす影響
第13章 頭蓋内圧が脳波に及ぼす影響
Lucy Sullivan, R. EEG T., CLTM
概要
頭蓋内圧(intracranial pressure;ICP)亢進は、一貫して神経学的転帰不良と関連づけられている(Treggiari ら、2007)。上昇した頭蓋内圧は脳組織を圧迫し、脳構造を変化させ、水頭症の一因となり、脳ヘルニアを引き起こし、脳への血液供給を制限する。
頭蓋内圧を上昇させる状態は多岐にわたる。一般的な原因を以下に挙げる(米国立医学図書館[National Library of Medicine]2011)。
- 動脈瘤破裂およびくも膜下出血
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 脳炎
- 頭部外傷
- 水頭症
- 脳室内出血
- 髄膜炎
- 硬膜下血腫
- てんかん重積状態
- 脳卒中
頭蓋内圧モニタリングは、外傷性脳損傷患者の治療を導く不可欠な要素と見なされている。
患者の頭蓋内圧が予想外に上昇した場合、非けいれん性てんかん発作を疑い、連続脳波モニタリングを開始すべきである。
連続脳波検査の有用性
頭蓋内圧モニタリング施行中の重症患者は鎮静化されていることが多く、薬剤によって麻痺化されている場合もある。連続脳波モニタリングは、非けいれん性てんかん発作および非けいれん性てんかん重積状態の可能性を排除するのに役立つ。非けいれん性てんかん発作および非けいれん性てんかん重積状態は、説明できない頭蓋内圧上昇を引き起こすことがある。
外傷性脳損傷は、頭蓋内圧亢進を引き起こすことが多い。脳波異常は焦点性(図13-1)のこともあれば、広汎性(図13-2)のこともある。意識レベルが低下するにつれ、脳波は徐波化する。睡眠紡錘波が、特に脳損傷後2日以内に認められた場合、予後は比較的良好である(YamadaおよびMeng 2010)(図13-3)。
頭蓋内圧がコントロールできず、脳ヘルニアが生じて脳への血液供給がすべて遮断されると、脳電気的無活動がみられる(図13-4)。
頭蓋内圧モニタおよび頭皮に巻いた付属の包帯のため、脳波検査技師はすべての頭皮電極を装着することができないことがある。モンタージュは、装着可能な電極から記録するように調整する。
図13-1.カーサーフィン事故により頭部損傷を負った患者の脳波。左半球にδ 波が認められる(ボックスは左半球からの記録チャンネルを示す)。患者は正中線偏位と伴う硬膜外血腫、脳出血、眼窩骨折および頭蓋低骨折であった。
図13-2.右半球で高振幅となる律動性δ 活動。患者は左の親指に攣縮がみられた。提供:Suzette LaRoche, M.D.
図13-3.非対称性睡眠紡錘波 ― 右側に睡眠紡錘波がみられるが左側にはみられない(ボックスは左中心部領域からの記録チャンネルを示す)。
図13-4.脳電気的無活動
参考文献
National Library of Medicine. Increased Intracranial Pressure. 2011. On the Internet at: www.nlm.nih.gov/medlineplus/ency/article/000793.htm
Treggiari MM, Schutz N, Yanex ND, Romand JA. Role of Intracranial Pressure Values and Patterns in Predicting Outcome in Traumatic Brain Injury: A Systematic Review. Neurocrit Care 2007; 6:104—112.
Yamada Y, Meng E. Practical Guide for Clinical Neurophysiologic Testing: EEG. Philadelphia, PA: Lippincott Williams & Wilkins; 2010; p. 244.