成人患者への持続脳波モニタリング 第16章 頭蓋骨切除術/開頭術

第16章  頭蓋骨切除術/開頭術

Shelley Wolfe, R. EEG/EP T., CNIM, CLTM; Sara Brown, MS;
Ryan R. Lau, R. EEG/EP T., CNIM, CLTM, MS

 

概要

 頭蓋骨切除術や開頭術を受けた患者やその他の頭蓋欠損を有する患者は、治癒した骨の構造が均一でないため、脳波が不明瞭になることがある。頭蓋欠損部の脳波はブリーチリズムを呈する場合がある。一見異常に見えるが、臨床的関連所見はなく予想できる波形であり、通常、てんかん発作性変化ではない。この章では、ブリーチリズムのパターンについて述べる。 

 

連続脳波検査の有用性

ブリーチリズム 

ブリーチリズムは、頭蓋骨欠損部およびその周辺に発生する α、β、μ 律動の振幅活動の焦点性増大で、開頭術または頭蓋手術を受けた患者に典型的にみられる波形である(Cobb ら 1979)。頭蓋骨欠損は高周波を減衰するはずの頭蓋骨がないため、焦点性、非対称性、高振幅の β 活動を伴うブリーチリズムを呈することがある(図 16-1)。棘波や焦点性徐波化が伴わなければ異常所見ではなく、頭蓋骨が電圧を弱める効果が損なわれている事を考えれば、予想できる生理的状態である(Tatum ら 2006)。 

 

ブリーチリズムが出現するメカニズムには不明な点が多い(Brigo ら 2011)。骨は高周波を減衰するフィルターとして働き、大脳皮質と頭皮電極の間に存在する主要な抵抗体である。ブリーチリズムにおける振幅の増大と周波数の上昇は、頭蓋骨欠損による脳波フィルター機能の低下に起因する基礎律動の増大を反映する可能性がある(Brigo ら 1979)。大脳皮質から頭皮に流れる電流は頭蓋欠損により顕著に増加する可能性がある。ブリーチリズムは、この頭蓋欠損部をフィルターされずに通り抜ける脳活動を表現する(Brigo ら 1979)。 

 

開頭術後にブリーチリズムが出現することにより脳波の解釈が困難になる可能性がある。これは、フィルターされない高電位の生理学的な波形が、発作間てんかん様異常に似た棘波様の不規則な形態を呈する可能性があるためである。脳波のいくつかの側面は、ブリーチリズムとてんかん様放電の区別に有用であるかもしれない。鋭波様の形態をしていても、ブリーチリズムそのものはてんかんとは関係がない。ブリーチリズムが認められる場合は、「控えめな」判読方法をとることを推奨する。すなわち、非てんかん鋭波様波形を過大評価しててんかんと誤診してしまうことを避けるために、てんかん様異常と判断する閾値を高めに設定するのがよい(Brigo ら 2011)。 

 

16-1

図 16-1.右内側側頭葉グリオーマで右頭頂部開頭術を受けた患者の脳波。左右半球で振幅が軽度に非対称で、ブリーチリズムが右半球から出現している(ボックスは右傍矢状部からの記録チャンネルを示す)。 

 

16-2

図 16-2.転移性肺がんに起因する左頭頂葉病変切除のため左頭頂部開頭術を受けた患者の脳波。 左半球から周期性放電が出現していることに注目(矢印)。 

 

16-3

図 16-3.左内頸動脈瘤クリッピングのため左前頭‐側頭部開頭術を受けた患者。動脈瘤の形状から血管内からの術式は不利で、開頭術が適切と考えられた。左半球に徐波化が認められる(ボックスは左半球からの記録チャンネルを示す)。 

 

16-4

図 16-4.左側頭部開頭術を受けた患者の脳波。徐波化を背景に左前頭‐側頭部のブリーチリズムがみられる(ボックスは左前頭‐側頭部領域からの記録チャンネルを示す)。 

 

16-5

図 16-5.左頭頂部髄膜腫切除のため左頭頂部開頭術を受けた患者の脳波。 ブリーチリズムは C3 および Cz で最も著明となる(ボックスは C3 and Cz からの記録チャンネルを示す)。 

 

16-6

図 16-6.肺がんと右頭頂‐後頭葉に転移性疾患を有する患者。腫瘍切除のため右頭頂-後頭部開頭術を行った。この脳波区分では、周期性一側性てんかん様放電(PLEDs)右半球から出現している(ボックスは右半球からの記録チャンネルを示す)。 

 

16-7

 図 16-7.再発性希突起グリオーマのため 3 回目の右大脳半球切除術を受け、頭蓋、特に C4 の位置に凹みができた患者。ブリーチリズムが C4 および T4 から出現していることに注目(ボックスは C4 および T4 からの記録チャンネルを示す)。電極アーチファクトの可能性は排除された。 

 

16-8

図 16-8.左前頭‐側頭部開頭術および左内頸動脈から後交通動脈への分岐部の動脈瘤のクリッピングを受けた患者の脳波。徐波化が F7-T3から出現していることに注目(F7-T3 チャンネルがが焦点により等しく影響を受けているため、両電極が打ち消し合っている)(ボックスは F7 および T3 からの記録チャンネルを示す)。 

 

16-9

図 16-9.左中大脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血を起こした患者。中大脳動脈瘤クリッピングのため左前頭‐側頭部開頭術を行った。 脳波には C3 にブリーチリズム(下線部)、左側頭部電極(F7-T3)に徐波化(ボックス)が認められる。 

 

16-10

図 16-10.左前頭葉の腫瘍切除のため左前頭部覚醒開頭術を受けた患者。12 年前には左頭頂部の膠芽腫を外科的に切除している。脳波には C3 および Cz にブリーチリズムを認める(ボックスは C3 および Cz 空の記録チャンネルを示す)。 

 

16-11

図 16-11.再発性希突起グリオーマのため 3 回目の右大脳半球切除術を受けた患者。光駆動反応は左側に認められた。右半球に徐波化がみられる(ボックスは右半球電極からの記録チャンネルを示す)。 

 

16-12

図 16-12.膠芽腫切除のため左前頭‐頭頂開頭術を受けた患者の脳波。 前頭‐側頭部の徐波化が左半球に認められる (ボックスは左前頭部および側頭部電極からの記録チャンネルを示す)。 

 

16-13

図 16-13.左側頭部希突起グリオーマ切除のため左側頭部開頭術を受けた患者の脳波。C3 および P3 でブリーチリズムが認められ(ボックスは C3 および P3 からの記録チャンネルを示す)、T3 には軽度徐波化がみられる。 

 

16-14

図 16-14.左前頭部-側頭部開頭術および左中大脳動脈分岐部の動脈瘤のクリッピングを受けた患者の脳波。 左側に鋭波がみられ(下線部)F7 および T3 で最大化する(ボックスは F7 および T3 からの記録チャンネルを示す)。 

 

参考文献

Brigo F, Cicero R, Fiaschi A, Bongiovanni LG. The Breach Rhythm. Clin Neurophysiol 2011; 122:2116—2120. 

 

Cobb WA, Guiloff RJ, Cast J. Breach Rhythm: The EEG Related to Skull Defects. Electroencephalogr Clin Neurophysiol 1979; 47:251—271. 

 

Tatum WO, Husain AM, Benbadis SR, Kaplan PW. Normal Adult EEG and Patterns of Uncertain Significance. J Clin Neurophysiol 2006; 23:194—207. 

 

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カテゴリー: 「ベッドサイドでの脳波パターン:成人患者への持続脳波モニタリング」, 特集