成人患者への持続脳波モニタリング 第8章 外傷性脳損傷

第8章  外傷性脳損傷

Ashley Klisz, RN, BSN; Anita Schneider, R. EEG/EP T., CNIM

 

概要

米国脳障害協会(Brain Injury Association of America)によれば、外傷性脳損傷(traumatic brain injury;TBI)は患者の身体、知性、感情および社会・職業生活を変化させる可能性のある脳に対する外傷性損傷と定義されている。

 

外傷性脳損傷は、その程度によって軽度、中等度、重度に分けることができる。

  • 軽度の外傷性脳損傷はグラスゴー昏睡スケール(Glasgow Coma Scale;GCS)の評点13~15に相当する。軽度の脳しんとうが最も一般的な例である。
  • 中等度の外傷性脳損傷はGCSの評点9~12に相当し、出血や打撲等の構造的損傷と関連づけられる。
  • 重度の外傷性脳損傷はGCSの評点3~8に相当し、認知および/または身体障害あるいは死亡と関連づけられる。6時間以上の意識消失を顕著な特徴とする。

 

外傷性脳損傷の原因は鈍性外傷の場合もあれば、開放性外傷の場合もある。鈍性外傷の方が一般的で、頭部を固い表面に打ちつける、または動く物体が頭にあたるなどにより生じる。ただし、「閉鎖」系に破綻はない。 この種の外傷は焦点性脳損傷および/または無酸素性損傷を引き起こす。開放性外傷は、硬膜が破損して頭蓋内容物が環境中に暴露することにより生じる。

 

外傷性脳損傷に対する神経救命救急医療(neurocritical care)の目的は、脳腫脹、頭蓋内圧上昇、細胞死に関連する二次侵襲(secondary insult)の影響を制限することである。脳損傷後の早期にこれらの二次侵襲に対する脳の脆弱性が上昇し、細胞障害性脳浮腫、虚血の反復、発熱と関連障害、発作等が生じる。発作は頻繁に起こる二次侵襲で、診断さえつけば治療は容易である。発作の大多数は非けいれん性(NCS)であるため、臨床的に症状を認めない。したがって、連続脳波検査を行わなければ認識することはできない(Vespa 2005)。

 

連続脳波測定を適時に開始することがたいへん重要である。未治療の非けいれん性てんかん重積状態(NCSE)の死亡率は毎年1~2%ずつ上昇する。診断が遅れ、NCSEが持続すれば、永久的脳損傷や死亡のリスクが上昇する(Youngら 1996、Drislaneら 2008)。治療開始前の観察に使える時間は短い。この時間内に直接的な脳モニタリングを行い、発作を確認することが必要である。てんかん発作はいわば脳の不整脈であり、脳モニタリングは心臓モニタリングを行って心臓の不整脈の検出するのと同じくらい価値がある(Andrewsら 1990)。

 

連続脳波検査の有用性

脳損傷後、特に出血性脳損傷後に発作が起こることはよくある。脳損傷後早期の発作の発生率は2.8%~10%である(Annegersら 1980、JennettおよびLewin 1960)。重度の脳損傷を受け、その時またはその直後に発作を起こした患者に関する最近の2件の研究では、入院後の急性期に高い頻度(15%)で発作を起こしていることが示された(Blackら 1975、Kollevold 1976)。Leeら(1995)によれば、脳損傷後の臨床発作発生率は1週間以内が4.1%、24時間以内が1.2%であった。

 

非けいれん性てんかん発作を含むてんかん発作はさらに有害な影響を及ぼす証拠がある。非けいれん性てんかん発作はそれだけで脳損傷の感受性マーカーである神経特異エノラーゼ(NSE)値を上昇させる(DeGiorgioら 1995)。UCLAのVespaら(2007)によると、外傷性脳損傷後の非けいれん性てんかん発作は、遅発性の長期にわたる頭蓋内圧上昇や代謝危機(metabolic crisis)を引き起こす。外傷性脳損傷後の非けいれん性てんかん発作の発生率が明らかにされている。Vespaら(1999)は中等度~重度の外傷性脳損傷患者(グラスゴー昏睡スケール3~12)に連続脳波モニタリングを行い、エレクトログラフ(非けいれん性)てんかん発作が最も一般的な発作型であることを示した。患者91人中22%に発作が認められ、その過半数(57%)が非けいれん性てんかん発作を呈した。ほとんどの発作は脳損傷後1週間以内に起こり、発作の発生率は治療的フェニトイン値、エタノール使用の停止、または脳損傷のタイプに影響されなかった。

 

ただし、モニタリングの調査の対象となったのは中等度~重度の脳損傷患者のみであり、軽度脳損傷患者における非けいれん性てんかん発作の発生率については調査が十分でないことに留意すべきである(Vespa 2005)(図8-1)。

8-1

 

図8-1.上のグラフ:外傷後の各日に発作を起こした患者数で示した外傷後発作の経時的推移。下のグラフ:特定の外傷性損傷を負った患者における発作の発生率(発作を起こした患者は白い棒で示した)。TSAH:外傷性くも膜下出血、EDH:硬膜外血腫、SDH:硬膜下血腫、Multiple:多数の打撲、nl、画像検査で正常。転載許可:Vespa 2005。

 

連続脳波モニタリングに基づく目標志向の発作治療-

 

脳出血後または脳損傷後に発作を起こす患者は、脳浮腫増大、正中線偏位、頭蓋内圧上昇を起こしやすい(Vespaら 2003)。これらは損傷後1週間以内に起こり、この期間は脳損傷後発作の発生率のピークに重なる。

 

目標志向の治療を行うためのいくつかの原則が文献で提案されている(Vespa 2005)

  1. 脳外傷または脳出血がみられたら速やかに連続脳波検査を行うこと。
  2. 脳出血患者(外傷性または非外傷性)虚血性脳卒中患者よりもリスクが高いため、医療資源が限られている場合は、脳出血患者のモニタリングを優先すること。
  3. 発作の時間的特性を考慮し、モニタリングは少なくとも5日間継続すること。
  4. 発作は非けいれん性であることの方が多い。したがって、臨床的発作を欠くからといって、連続脳波検査を避けてはならない。

発作を回避するまたはその数を減らすための治療としては、長時間作用型抗てんかん薬の投与やミダゾラム、 プロポフォール、フェノバルビタール等の抗てんかん薬の持続注入があげられる。脳波モニタリングは、薬剤用量の調整に有用である。抗てんかん薬の持続注入は一般に発作停止効果が非常に高い(Vespa 2005)。

8-2

図8-2.左硬膜下血腫患者における左半球の徐波化(ボックスは左半球からの記録チャンネルを示す)。

8-3

図8-3.患者はこの脳波記録の前日に転倒し、右側頭部出血をきたした。右半球にδ 波がみられる(ボックスは右半球からの記録チャンネルを示す)。

 

参考文献

Andrews PJ, Piper IR, Dearden NM, Miller JD. Secondary Insults during Intrahospital Transport of Head-Injured Patients. Lancet 1990; 335:327—330.

 

Annegers JF, Grabow JD, Groover RV, Laws ER Jr, Elveback LR, Kurland LT. Seizures after Head Trauma: A Population Study. Neurology 1980; 30:683—689.

 

Bader MK, Littlejohns L. AANN Core Curriculum for Neuroscience Nursing: 4th Edition. St. Louis: Saunders; 2004.

 

Black P, Shepard RH, Walker AE. Outcome of Head Trauma: Age and Post-Traumatic Seizures. Ciba Found Symp 1975: 14:215—219.

 

DeGiorgio CM, Correale JD, Gott PS, Ginsburg DL, Bracht KA, Smith T, Boutros R, Loskota WJ, Rabinowicz AL. Serum Neuron Specific Enolase in Human Status Epilepticus. Neurology 1995; 45:1134—1137.

 

Drislane FW, Lopez MR, Blum AS, Schomer DL. Detection and Treatment of Refractory Status Epilepticus in the Intensive Care Unit. J Clin Neurophysiol 2008; 25:181—186.

 

Jennett WB, Lewin W. Traumatic Epilepsy after Closed Head Injuries. J Neurol Neurosurg Psychiatry 1960; 23:295—301.

 

Kollevold T. Immediate and Early Cerebral Seizures after Head Injuries. Part I. J Oslo City Hosp 1976; 26:99—114.

 

Lee ST, Wong CW, Yeh YS, Tzaan WC. Early Seizures after Moderate Closed Head Injury. Acta Neurochir 1995; 137:151—154.

 

McCance KL, Huether SE. Pathophysiology: The Biologic Basis for Disease in Adults and Children: 6th Edition. St. Louis: Mosby; 2001.

 

Vespa P, O’Phelan K, Mirabelli J, Starkman S, Kidwell C, Saver J, Nuwer MR, Frazee JG, McArthur DA, Martin NA. Acute Seizures after Intracerebral Hemorrhage: A Factor in Progressive Midline Shift and Outcome. Neurology 2003; 60:1441—1446.

 

Vespa P. Continuous EEG Monitoring for the Detection of Seizures in Traumatic Brain Injury, Infarction, and Intracerebral Hemorrhage: “To Detect and Protect”. J Clin Neurophysiol 2005; 22:99—106.

 

Vespa P, Miller C, McArthur D, Eliseo M, Etchepare M, Hirt D, Glenn TC, Martin N, Hovda D. Nonconvulsive Electrographic Seizures after Traumatic Brain Injury Result in a Delayed, Prolonged Increase in Intracranial Pressure and Metabolic Crisis. Crit Care Med 2007; 35:2830—2836.

 

Young GB, Jordan KG, Doig GS. An Assessment of Nonconvulsive Seizures in the Intensive Care Unit Using Continuous EEG Monitoring: An Investigation of Variables Associated with Mortality. Neurology 1996; 47:83—89.

 

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カテゴリー: 「ベッドサイドでの脳波パターン:成人患者への持続脳波モニタリング」, 特集