成人患者への持続脳波モニタリング 第5章 てんかん発作

第5章   てんかん発作

Denise Fortenberry, RN, MSN, ACNP-C

 

概要

てんかん発作とは脳の神経細胞の異常な放電である。異常な神経機能を示す脳の部位と、異常な脳活動が引き起こす身体症状によって分類される。てんかん発作は、影響を受けた脳の部位によって部分発作と全般発作に分けることができる。脳損傷または脳症患者で起こるてんかん発作は漸進的に発現し、低周波の律動性パターンを伴うことも多い(Pattersonら、2010)。じっとして体を動かさないICUの患者で心拍数の急上昇が認められた場合は、てんかん発作の前兆であることが多い。(FischおよびPadin-Rosado、2010)。

部分発作
単純部分発作は限局性の(脳の狭い領域に孤立した)てんかん発作であり、認知機能の変化を伴わない。運動徴候、感覚症状、自律神経系の変化、気分の変化を呈することがある。症状は、てんかん発作によって障害を受けた脳領域を反映する。以前経験したような懐かしい感じを覚えたり、金属のような味を感じたりすることも多い。脳波には小領域に限局する反復性の高振幅棘徐波放電が認められる。発作巣が記録電極から離れている(おそらく脳の深部)場合には、脳波に異常が認められない場合もある(図5-1)。

5-1

図5-1.単純部分発作が臨床的に右肩の痙動として認められた。その間患者は清明で、見当識があり、命令に従うことができた。EMG1- EMG 2 チャンネル(ボックス)は右肩に装着した2 個の電極で、各痙動を記録している(矢印)。痙動による動きアーチファクトが認められ
るが、異常脳波はみられない。
[T7(10-10 法)はT3(10-20 法)、P7(10-10 法)はT5(10-20 法)、T8(10-10 法)はT4(10-20 法)、P8(10-10 法)はT6(10-20 法)にそれぞれ対応する]。

 

複雑部分発作も限局性のてんかん発作である。神経学的検査では、覚醒障害や意識障害が認められる。このような意識の変化は、昏睡(意識消失)とは異なる。複雑部分発作は、記憶喪失を伴う錯乱状態として発現する。複雑部分発作は側頭葉に由来することが多いが、側頭葉以外の部分に起因することもある。指先でテープルをたたいたり、口をもぐもぐしたりする反復運動(自動症)が代表的な症状である。
複雑部分発作を臨床的に同定することは難しい。高齢者や重症患者では、精神状態の変化や錯乱と誤診されることが多い。脳波では、複雑部分発作は単純部分発作よりも脳のより広い部分に異常が現れる(図5-2 および5-3)。

5-2

図5-2.睡眠中に起きた複雑部分発作。速波周波数が重なる右側頭部高振幅δ 波(ボックス)に注目。

 

5-3

図5-3.複雑部分発作の発現。左側頭部電極に律動性θ 波(ボックスは左側頭部からの記録チャンネルを示す)がみられ、右後頭部の背景α 活動が維持されている(下線部)ことに注目。
[T7(10-10 法)はT3(10-20 法)、P7(10-10 法)はT5(10-20 法)、T8(10-10 法)はT4(10-20 法)、P8(10-10 法)はT6(10-20 法)にそれぞれ対応する]。

 

部分発作は一次性てんかん障害(側頭葉てんかん等)や脳の構造異常(脳腫瘍、脳卒中等)に関連する可能性がある。脳疾患の既往がある急性患者や高齢患者は、入院中に新規の複雑部分発作を発症する危険性が高い。
部分発作が脳全体に広がり、二次性全般化を引き起こすこともある。発作の始まりを確認していない全般性発作はすべて脳波を調べて焦点性の発作源を評価する必要がある(図5-4)。

5-4

図5-4.二次性全般性発作(ボックス)。右側頭部領域の焦点性棘波の後に全般性棘徐波放電がみられる。
T1 およびT2 電極は、外耳道から外眼角までの距離の3 分の1 の点から1 cm 上のところに配置した。

 

一次性全般発作
一次性全般発作では、脳波の変化が左右の脳半球に同時に出現する。全般発作は運動発作(筋収縮)と非運動発作(筋収縮なし)に分類される。一次性全般発作には以下のようなものがある。

  • 全般性強直間代発作
  •  強直発作(筋緊張の消失)
  •  ミオクローヌス発作(筋の急激な攣縮)
  •  欠神発作(小児でみられる)
  •  強直発作(体幹と顔面筋の攣縮)
  •  間代発作(筋収縮の反復)

集中治療室の臨床者が最も一般的に認識するてんかん発作は、全般性強直間代発作である。この種の発作では、治療により患者が鎮静状態や昏睡状態に陥ることがあるため、発作による体動の評価がさらに困難となる。

 

脳波におけるてんかん発作の確認

てんかん発作中は神経放電が同期する。神経放電の同期は脳の小部位に限局することもあれば、その周囲、あるいは脳全体に同時に拡大することもある。

脳波はてんかん発作の診断に不可欠な要素である。脳波計は心電計が心臓をモニタリングするのと同じように脳をモニタリングする。てんかん活動は脳波上、しばしば棘徐波や鋭波として同定される(図5-5および5-6)。

5-5

図5-5.広汎性棘徐波活動

5-6

図5-6.T8 電極の焦点性鋭波(矢印)。
[T7(10-10 法)はT3(10-20 法)、P7(10-10 法)はT5(10-20 法)、T8(10-10 法)はT4(10-20 法)、P8(10-10 法)はT6(10-20 法)にそれぞれ対応する]。

 

てんかん発作が出現する脳波の部位により、脳波は全般性発作(図5-7 および5-8)と焦点性発作(図5-9)に分類することができる。

5-7

図5-7.太い黒線は全般性強直間代発作の開始時点を示す。筋および動きアーチファクトがすぐに基礎脳波を覆い隠してしまう。
[T7(10-10 法)はT3(10-20 法)、P7(10-10 法)はT5(10-20 法)、T8(10-10 法)はT4(10-20 法)、P8(10-10 法)はT6(10-20 法)にそれぞれ対応する]。

 5-8

 

図5-8.全般性強直間代発作の終了後に発作後抑制がみられる。

5-9

図5-9.右側頭葉に起始し、漸増する焦点性発作(ボックス)
[T7(10-10 法)はT3(10-20 法)、P7(10-10 法)はT5(10-20 法)、T8(10-10 法)はT4(10-20 法)、P8(10-10 法)はT6(10-20 法)にそれぞれ対応する]。

 

てんかん重積状態

てんかん重積状態(status epilepticus;SE)とは、自然抑制機構(GABAを介した反応)を喪失した持続性発作である。てんかん協会(Epilepsy Foundation)(1993)の定義によれば、「発作が30分以上持続するか、意識が完全に回復しないうちに次の発作が起こる」場合をてんかん重積状態という。発作の持続時間は通常1~2分である。長期の発作による脳の損傷は30分以内に起こることがあるという。これらのことから、持続性発作の治療は発作開始後5~10分以内に開始するべきであると、てんかん協会(1993)は推奨している。

てんかん重積状態は臨床症状によって以下のように分類される。

  • 全身けいれん性てんかん重積状態(generalized convulsive status epilepticus;GCSE)
  • o 微小(subtle)てんかん重積状態とは、理学的検査では徴候の確認が困難な発作を分類する用語である。徴候の例としては、瞬き、顔面のひきつり、眼振等があげられる。
  • 焦点性運動てんかん重積状態(focal motor status epilepticus;FMSE)
  • 非けいれん性てんかん重積状態(nonconvulsive status epilepticus;NCSE)

全身けいれん性てんかん重積状態(GCSE)は、臨床者が最も容易に確認できるてんかん発作である。全般性強直間代発作後、混乱状態が2時間持続し、次の全般性強直間代発作を起こす患者もGCSEと考えられるため、それに適した治療する必要がある。

5-10

図5-10.全般性ミオクローヌスてんかん重積状態。脳波は高振幅の全般性多棘波、棘波および棘徐波複合を示す。
[T7(10-10 法)はT3(10-20 法)、P7(10-10 法)はT5(10-20 法)、T8(10-10 法)はT4(10-20 法)、P8(10-10 法)はT6(10-20 法)にそれぞれ対応する]。

 

微小てんかん重積は、GCSEの下位分類である。昏睡状態や鎮静状態の患者では、顔面の引きつりや眼振などの微妙な徴候しか示さないことがある。

焦点性運動てんかん重積(focal motor status epilepticus;FMSE)は、顔面または四肢の連続的な攣縮として発現する。長期の単純部分発作であることが多く、しばしば脳腫瘍などの脳の構造異常と関連づけられる。FMSEを薬剤でコントロールすることは困難で、昏睡を誘発するような薬剤を高用量で使用する治療は、発作が周囲に拡大した場合にほぼ限られる。発作が脳の小領域に限局していれば、てんかん発作が持続しても脳損傷が起きる危険性は低いが、その判断には連続脳波が有用である。

非けいれん性てんかん重積(NCSE)は、身体症状を伴わない意識変容状態である。NCSEは通常、臨床症状が最小である。症状としては、覚醒していた患者が昏睡状態になるなどが挙げられる。精神状態の浮き沈み(waxing waning)もよくみられる。NCSEの一般的な原因としては、薬剤の毒性や敗血症などの感染症がある。NCSEは病院で過小診断されることが最も多い。NCSEに関連する一般的な脳波異常として、棘波や多棘波が律動的に出現する(図5-11、5-12A、5-12B、5-13A、5-13B)。

5-11

図5-11.高振幅棘波および/または鋭波を特徴とする非けいれん性てんかん重積状態(NCSE)。約2 Hz の頻度で出現している。
[T7(10-10 法)はT3(10-20 法)、P7(10-10 法)はT5(10-20 法)、T8(10-10 法)はT4(10-20 法)、P8(10-10 法)はT6(10-20 法)にそれぞれ対応する]。

5-12

図5-12A.2~2.5 Hz の全般性棘徐波を特徴とする非けいれん性てんかん重積状態。患者はこの脳波記録の72 時間前に心肺停止を起こしている。

5-12-2

図5-12B.図5-12A と同じ患者。患者はロラゼパム12 mg の投与を受け、左前側頭部で最大化する棘波焦点が明らかになった(下線部)。

5-13

図5-13A.非けいれん性てんかん重積状態を特徴とする連続、高振幅、前頭部優位の2~3 Hz の放電。

5-13-2

図5-13B.図5-13A と同じ患者。ロラゼパム2 mg の最終投与後まもなく脳波は著しい改善を示した(総投与量4 mg を2 分かけて投与)。
前にはみられなかった7~8 Hz の後頭部背景律動が現れている。

 

周期性てんかん様放電はてんかん発作か?

周期性てんかん様放電(PEDs)は、1~2秒おきに起こる反復性の鋭波である。PEDsは全般性(全般性周期性てんかん様放電;GPEDs)(図5-14)の場合もあれば、一側性(周期性一側性てんかん様放電;PLEDs)の場合もある(図5-15)。GPEDsとPLEDsは代謝性脳症、てんかん重積後、虚血性脳卒中、無酸素性心停止、脳感染でよくみられる。GPEDsやPLEDsが認められた場合は、臨床上の発作リスクを考える必要がある。PEDsは、非運動性てんかん重積でもよくみられる。PEDsの治療については意見が分かれており、熟練した神経科医による評価が必要である。

5-14

図5-14.全般性周期性てんかん様放電(GPEDs)。放電は心電図アーチファクトではないことに注意。なぜなら、放電は心電図チャンネル(一番下)と同期していない。
[T7(10-10 法)はT3(10-20 法)、P7(10-10 法)はT5(10-20 法)、T8(10-10 法)はT4(10-20 法)、P8(10-10 法)はT6(10-20 法)にそれぞれ対応する]。

5-15

図5-15.右半球の周期性一側性てんかん様放電(PLEDs)(ボックスは右半球からの記録チャンネルを示す)。

 

てんかん発作に類似した臨床的事象

病歴からてんかん発作に見える臨床状態は多い。失神性のイベントはてんかん発作と混同される最も一般的な状態である。てんかん発作に類似した状態として最も一般的な状態として、心不整脈や不安発作が挙げられる。これらのイベントを正確に診断するためには、病歴聴取と検査が不可欠である。詳細な病歴聴取を行っても真の発作と偽の発作の鑑別が難しい場合もある。

非てんかん発作は、しばしば心的外傷後ストレス障害(PTSD)と関連づけられる、心理的要因による転換性障害である。患者は全般性強直間代発作様の動きを呈し、出来事の記憶がなく、関連する脳波変化を示さない。実際、このイベントはてんかんではなく、転換性障害である。イベント中の理学的検査では、てんかん 発作と非てんかんイベントを鑑別することは難しいことが多い。イベントの脳波モニタリングと同事ビデオ記録が非てんかん発作の最も正確な診断方法である。

 

発作間放電

発作間放電とは、脳波上の発作と発作の間にみられるてんかん様放電(てんかん放電の形、すなわち棘波および/または鋭波を呈する)である(図5-16)。すべてのてんかん患者に発作間放電がみられるわけではない。また、発作間放電を呈するすべての患者が将来発作またはてんかんを発症するとはかぎらない。

5-16

 図5-16.睡眠中の右側頭部(ボックス)に発作間放電がみられる。中心部領域には睡眠紡錘波がみられる(丸)。
[T7(10-10 法)はT3(10-20 法)、P7(10-10 法)はT5(10-20 法)、T8(10-10 法)はT4(10-20 法)、P8(10-10 法)はT6(10-20 法)にそれぞれ対応する]。

 

連続脳波検査の有用性

昏睡患者では、身体の動きのみからてんかん発作を診断することが難しいことがある。特に、てんかん発作と同定するのが困難な広範な症状を患者が呈している場合は、連続脳波が有用となる。精神状態が不安定な患者の場合、30 分の脳波記録では発作を捕捉できないかもしれない。しかし、連続脳波記録であれば、鎮静または昏睡状態の患者が理学的検査では確認できない間欠的な発作を起こしているかどうかを判断するための有用な情報を得ることができる。ICU での非けいれん性てんかん発作は脳波モニタリングを実施しないと見逃すことが多い。Kenneth Jordan(1993)によると、神経ICU 患者のうち34%では脳波モニタリングでなければ非けいれん性てんかん発作を同定できなかった。このように、昏睡患者に適切な治療を行い、未確認の発作により脳が障害を受けることを防ぐため、連続脳波モニタリングは不可欠な検査である。

連続脳波はまた、てんかん重積の治療後に高用量の鎮静剤を投与した患者で発作が再発していないかどうかを判断する際にも有用である。過去にけいれん性発作の治療を受けたことがあるICU患者の14%で非けいれん性てんかん発作の発生が認められている(DeLorenzo 1998)。

 

脳波計は鎮静または昏睡患者の脳のモニターであり、患者に起こる致命的なてんかん発作が薬剤で治療可能かどうかを判断するために有用な情報を与える。脳波の概念を理解することにより、臨床者は治療の適応となりうる患者の状態に注意を向けることができ、ひいては重症患者に良好な転帰を確保することができる。

 

参考文献

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カテゴリー: 「ベッドサイドでの脳波パターン:成人患者への持続脳波モニタリング」, 特集