成人患者への持続脳波モニタリング 第3章 電極、モンタージュおよび局在

第3章 電極、モンタージュおよび局在

Cheryl Plummer, R. EEG T., CLTM, BS

 

脳波検査を行う場合、接着剤を用いて電極を患者の頭部に貼付する。装着方法にはいろいろあるが、最も一般的なのはコロジオンを用いる方法である。コロジオンは糊の一種で、頭皮電極を確実に固定することができる。通常、コロジオンを含ませたガーゼを電極の上から頭部に貼付し、エアコンプレッサーで乾燥させる。接着クリームとガーゼまたはコットンを用いて電極を装着する方法もある。電極キャップや電極はめ込み式の「ヘッド・バンド」型の器具を用いる方法もある。病院によってそれぞれやりやすい方法がある。皮下針電極は特にICUで用いられる方法である。患者の頭蓋内に電極を装着する場合もある。この電極のワイヤは頭皮を通して脳波計のケーブルに接続する。頭蓋内電極は外科的に留置する。この方法は、てんかん発作の位置を特定するための長期のてんかんモニタリングに用いられることが最も多い。頭蓋内電極留置術を受けた患者は一昼夜ICUで過ごす場合がある。

 

どのようなタイプの電極を使用するにしても、患者の頭に巻いた包帯やラップなどを交換する際には細心の注意を払う必要がある。鋏は電極ワイヤを誤って切ってしまう恐れがあるので使うべきではない。病院が採用している電極装着方法になれることが大切である。

 

電極の素材は通常、金属である。金めっき製、銀や銀/塩化銀製、金属(通常は銀)ゲルに埋包したゲルタイプ、時にはMRIでも使用できる導電性プラスチック電極(図3-1)等の種類がある。電極は通常、真ん中に小さな穴があいており、ここから先の鈍な注射針で伝導性のあるクリームを注入する。病院が採用している電極のタイプと装着方法を脳波検査技師に確認することが大切である。

 

皮下電極は、ICUの昏睡患者に使用することがある。皮下電極は患者の頭皮下に装着する。皮下電極は小さく(長さ約13 mmで約 28ゲージの針が付く)、患者に不快感を与えることはほとんどない(図3-1)。皮下電極は同じ方向に差し込んですべての電極が同じ面にそろうように配置し、電極の配置によって活動が非対称にならないようにする。国際10–20電極配置法を利用する。針のハブはすべて頭頂部を向く、または頭頂部から離れる方向を向くようにする(Schneider、2006)。 電極はテープまたはコロジオンを含ませたガーゼでしっかり固定する。電極が正しく装着されれば、数日間は使用可能である。患者の体位変更や移動を行うときは、針刺し事故が起こらないよう注意する。

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図3-1.ディスク型のカップ頭皮脳波電極の2 例と皮下針電極の1 例。写真提供: Grass Technologies, An Astro-Med, Inc. Subsidiary, West Warwick, RI, USA

 

 

国際標準10‐20 電極配置法

患者の頭部に電極を装着する位置は、1958 年に開発された国際10–20 電極配置法に従って頭部を測定することにより決定する。この電極配置法は世界的に利用されており、電極の位置の名称によって医師や検査技師は電極の配置を正確に知ることができる。すべての電極の位置は、2 点間の10%または20%の点に位置する(図3-2)。検査技師は、この電極配置法を正確に行えるように訓練を受ける。頭蓋の一方の半球に頭蓋欠損または異常がある患者では、左右相同な領域から信号を記録できるように、対応する反対側の電極の位置も同じように変えなければならない。

 

微小な所見を検出し、脳活動とアーチファクトを鑑別するため、電極一式を装着する必要がある(Patterson ら 2010)。電極一式には、ICUでの脳波検査で起こりがちな一部の電極の不具合の発生も考慮されている。

国際10‐20 法では以下の名称を使用する。

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図3-2.国際10-20 法による電極装着位置の測定方法。電極は、頭蓋上の基準となる2 点間を10%または20%で区切った点に装着する。 図の提供:Grass Technologies, An Astro-Med, Inc. Subsidiary, West Warwick, RI, USA

 

これらの部位は異なる脳葉に対応する(図3-3)。

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図3-3.国際10‐20 法の電極配置と対応する脳の解剖学的構造。図の提供:Grass Technologies, An Astro-Med, Inc. Subsidiary, West Warwick,RI, USA

 

 

頭蓋の左側に配置する電極の名称には奇数の番号がつく。
頭蓋の右側に配置する電極の名称には偶数の番号がつく。
正中線上に配置する電極の名称にはz がつく。

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図3-4.国際脳波電極配置法の10‐20 法

 

 

10–10 法では以下の電極位置の呼称が変わるが、位置そのものは変わらない。
T3 → T7
T4 → T8
T5 → P7
T6 → P8

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図3-5.国際10–10 法の電極配置による電極の呼称

 

 

モンタージュ

モンタージュとは、集めたデータを見る視点のことである。脳波計の各チャンネルには2つの電極間の電位差が示される。X線が同じ臓器や四肢を異なる画像で見せるのと同じように、モンタージュは同じ脳波活動を異なる様式で表示するのである。異なるモンタージュを比較することにより、脳波の活動や異常がめいかくになり、活動が最大となっている位置を特定することができる。

最も一般的に使われるモンタージュには双極導出法と基準導出法がある。双極導出法は、頭蓋上の前後、左右または円周上に並ぶ電極対の電位差を導出する方法である。基準導出法は、ひとつの電極を基準電極としてすべての電極との電位差を導出する方法である。ときには、左半球のすべての電極をひとつの基準電極(左の耳朶または乳様突起)に、右半球のすべての電極をもう一つの基準電極(右の耳朶または乳様突起)につないで導出することもある。これを同側基準導出法という。

モンタージュの例を以下に挙げる。

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図3-6.双極前後(縦)モンタージュ(バナナを2本縦にして並べたような形から、「ダブルバナナ」モンタージュとも呼ばれる)。 この前後(anterior-to-posterior;AP)モンタージュは連続脳波検査で最もよく利用される。本書で紹介するほとんどの脳波はこのモンタージュで導出されたものである。

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図3-7.双極導出の横モンタージュ。正中線の左から右へ電極の組合せが移動する。

 

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図3-8.同側耳基準モンタージュ

 

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図3-9.Cz基準モンタージュ

 

 

極性と局在

脳波信号の記録に用いられる増幅器は差動増幅器と呼ばれる。脳波計の各チャンネルには2つの入力(入力1と入力2)があり、ひとつのチャンネルでモニターされるのは2つの入力の差分である。振れが上向きか下向きかは信号の極性に依存する。極性には以下の規則がある。

波形が上向きであれば、入力1は入力2より陰性である(または陽性度が小さい)。
波形が下向きであれば、入力1は入力2より陽性である(または陰性度が小さい)。
脳波上の活動の局在を知るには、チャンネル間の位相反転を探すか、最大または最小の振幅を探して活動が最大になっている所を推定する。

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上の例では、位相反転(矢印で示す)はC3で最大となっている。2番目のチャンネルの振れは下向きで、F3はC3より陽性であることを意味し、したがってC3はF3より陰性である(またはより陽性度が低い)。3番目チャンネルの振れは上向きで、C3はP3より陰性度が大きいことを意味している。

 

下の例では、C3 とP3 は等電位で、両チャンネルが互いに打ち消し合っていることがわかる。すなわち電位差がないので脳波の振れがない。C3 とP3 は同じ程度に陰性である。

 

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下の基準モンタージュでみると、C3 とP3 が等電位であることが容易にわかる。

 

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参照文献

American Clinical Neurophysiology Society. Guideline 5: Guidelines for Standard Electrode Position Nomenclature. 2006. On the Internet at: www.acns.org

 

American Clinical Neurophysiology Society. Guideline 6: A Proposal for Standard Montages to be Used in Clinical EEG. 2006. On the Internet at: www.acns.org

 

Harner PF, Sannit T. A Review of the International Ten-Twenty System of Electrode Placement. Grass Instruments Company 1974.

 

Patterson SK, Kull LL, Hirsch LJ. Continuous EEG in the Intensive Care Unit: Indications and Procedures. In: Fisch BJ (Editor).
Epilepsy and Intensive Care Monitoring: Principles and Practice. New York, NY: Demos Medical Publishing; 2010; p. 11—24.

 

Schneider AL. Technical Tips: Subdermal Needle Electrodes: An Option for Emergency (“Stat”) EEGs. Am J Electroneurodiagnostic Technol 2006; 46:363—368.

 

Tyner FS, Knott JR, Mayer WB. Fundamentals of EEG Technology: Basic Concepts and Methods. New York, NY: Raven Press; 1983.

 

 

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カテゴリー: 「ベッドサイドでの脳波パターン:成人患者への持続脳波モニタリング」, 特集