成人患者への持続脳波モニタリング 第20章 実施モデル

第20章  実施モデル*

Leisha Osburn, R. EEG/EP T., CNIM, CLTM, DABNM, MS

 

要点

a)ICU 患者の連続ビデオ脳波(vEEG)モニタリングための最適な人員配置モデルでは、神経診断技師(CLTM および/またはR. EEG T.)チームが1 日24 時間週7 日体制でリアルタイム・モニタリングを行う。これらの検査技師は、計画書に定められた、あるいは患者の指定神経科医が設定した緊急異常値(特定の脳波パターン)を確認する。最適モデルでは、担当神経科医が1 日24 時間週7日体制のオンコールで待機する。緊急異常値を確認した検査技師は担当神経科医に連絡し、連絡を受けた担当神経科医は遠隔的にビデオ脳波を閲覧する。

 

b)現在、資格のある神経診断技師は不足しており、しかも1 日24 時間週7 日体制の人員配置は多くの労働力を必要とする。各病院は独自に暫定的なモデルを開発し、ICU 患者にある程度の持続脳波モニタリングを提供している。これらの暫定モデルにはバリエーションがあり、オフサイトの神経診断技師によるリアルタイム・モニタリング、オンサイトの看護師の介入、院内の神経診断技師の利用やオンコールでの自宅待機など、さまざまなモデルが実施されている。

 

c)ICU 患者の連続ビデオ脳波モニタリングは、データの管理と保管、有線・無線の遠隔モニタリングおよびオフサイト閲覧機能のメンテナンスを専任する情報サービス要員が必要である。理想的なモデルでは他にもサポート要員が必要で、そのすべてのプログラムを成功に導く中心的役割を担うのが神経診断技師臨床教育者(neurodiagnostic technologist clinical educator)である。大きなプログラムでは、根拠に基づいた最善策のデータベースとその適用を調整するため転帰コーディネータ(outcome coordinator)が必要であり、プログラムの品質保証のため有資格の神経診断技師が品質・リスク分析者(Quality and Risk Analyst)の役割を担う。

 

*出典:Osburn L. Staffing an ICU EEG Monitoring Unit. In: LaRoche SM (Editor). Handbook of ICU Monitoring. Demos Medical Publishing; 2013.

 

1)背景
a)歴史的にみると、ICU で行われる長期の脳波検査は限られた人数の患者を対象に行われてきた。ビデオ撮影をしながら(またはせずに)ベッドサイドで連続的に脳波を記録し、次の24 時間以内にデータを確認するという方法がとられてきた。

  •  さまざまな症状のICU 患者に対する長期脳波検査の利用が進むにつれ、その有用性もますます明らかになってきた。患者が重要な事象を経験する時点とその事象が確認される時点にはズレがあることも明らかになり、患者に最大の利益を提供するための最善の行動がとられていないことが浮き彫りになった。
  • 潜在的に重要な事象を自動的に認識するソフトの開発が進められている。この技術が実用化されれば、脳波判読の訓練を特に受けていない臨床者でも、脳波波形のスクリーニングを行うことができる。

     

     

     

     

     

    • この技術はまだ不完全で、偽陽性と偽陰性の事象がよく起こるため、陽性事象の二次スクリーニングや見逃した事象を検索する機会を設け、後で記録データを見直さなければならない。
    • ICU では、一般的なアーチファクトと処置に由来する脳波の変化を区別するため、脳波検査と並行してビデオ撮影を行う必要がある。
    • 真の事象とアーチファクトの鑑別のため、ビデオ記録と脳波パターンの相関性を自動的に検出する技術は今のところない。

2)基本モデル
a)最適な院内人員配置モデル1

  • ICU 患者の連続ビデオ脳波(vEEG)モニタリングを行うための最適な人員配置では、オンサイトの神経診断技師(CLTM および/またはR. EEG T.)が1 日24 時間週7 日体制でリアルタイム・モニタリングを専任で行う。このようなサービスは、多様な専門分野の医療提供者が人員配置モデルをより直観的に把握できるように、神経テレメトリー(neurotelemetry;NT)と総称される。
  • リアルタイムのビデオ脳波モニタリングは、専任の神経診断技師が、オンサイトの中央制御室で、1 日24 時間週7 日体制で行う。

     

     

     

     

     

    • 1 人の検査技師が同時に1~4 人の患者を専任でモニタリングするのが理想である。
    • この任務につく神経診断技師は、「緊急異常値」と考えられるビデオ映像や脳波または各患者にとって重要な事象を確認し、所定の計画書に従って適切な医療提供者に連絡する責任を負う。
    • リアルタイム・モニタリングに専任で対応する神経診断技師は、各患者について詳細なイベントログを記録する。
    • イベントログは、神経科医がオンサイトおよびオフサイトでデータを閲覧する際に利用できるものとする。
    • 時刻が記録された連続イベントログのほか、イベントログの各キーカテゴリの最も新しいエントリーがスプレッドシート最上部に表示される。これにより、検査技師は医師と看護師に重要な事象に関する情報をより迅速に提供することができるとともに、シフト交代時の患者の引き継ぎの際に、検査技師間で事象の正確な概要を共有することができる。
    • イベントログの詳細な例については、図1 を参照のこと。
    • このモデルでは、検査技師はすべてのデータの管理(プルーニング、アーカイビング等)についても責任を負う。
  • 1 日24 時間週7 日体制でオンサイトの対応をする神経診断技師が、検査の開始と中止を行うとともに、検査中の電極の完全性を維持する。彼らはリアルタイム・モニタリングに専任で対応する検査技師とは別に配備される人員であるが、適切な訓練と経験を有していれば、リアルタイム・モニタリングの補助や代行をすることができる。
  • 連続ビデオ脳波モニタリングには専任のIT アプリケーション・サポート・アナリスト(IT Application Support Analyst)が必要である。
  • 定期的な連続ビデオ脳波モニタリングを計画する場合は、神経診断技師臨床教育者(Neurodiagnostic Technologist Clinical Educator)が必要である。
  • 同時にモニターするベッド数が増えれば、インフラを支える人材が必要となる。特に、転帰、品質およびリスクの領域では、医師へのフィードバックを最適化し、根拠に基づく医療を確保するため、品質の維持とデータ管理のための人的支援が必要となる。
  • 1 日24 時間週7 日体制の神経診断技師の業務シフトは看護師の業務シフトによく似ている。 すなわち、12.5 時間×2(12 時間労働+30 分の休憩)のシフトで24 時間を対応し、交代時には患者の安全な引き継ぎのため30 分の重複時間を設ける。あるいは、8.5時間×3 のシフトで24 時間を対応することもできるが、12 時間×2 のシフトの方が望ましい。夜間と週末のシフトには、通常、報奨金が支払われる。
  • 検査技師が1 日24 時間週7 日体制でリアルタイム・モニタリングを行うための標準モデルは今のところ存在しない。このため、FTE(full-time equivalent;正規職員換算)は変動予算から外され、表1 に示す人員配置比率で固定予算に組み込まれる。当該サービスに関する24 時間ビデオ脳波検査課金コードは、当該部門における変動FTE 生産性の算定から外される。

(a)このモデルにおけるFTE の内訳、業務内容および配備人員の資格経験等については表1 を参照のこと。

b)オフサイトの最適人員配置モデル1

  • 小さな病院では、ICU 患者の連続ビデオ脳波(vEEG)モニタリングを行うための最適な人員配置では、神経診断技師(CLTM および/またはR. EEG T.)が、オフサイトの拠点から1 日24 時間週7 日体制でリアルタイム・モニタリングを行う。オンサイトの神経診断技師は、通常の勤務時間は院内で検査の開始と中止を行うとともに電極の完全性を維持し、1 日24 時間週7 日体制の残りの時間はオンコールで自宅待機する。このようなサービスは、多様な専門分野の医療提供者が人員配置モデルをより直観的に把握できるように、神経テレメトリー(neurotelemetry;NT)と総称される。
  • リアルタイムビデオ脳波モニタリングは、専任の神経診断技師が、オフサイトの中央制御室で、1 日24 時間週7 日体制で対応する。

     

     

     

     

    • 1 人の検査技師が同時に1~4 人の患者を専任でモニタリングするのが理想である。
    • この任務につく神経診断技師は、「緊急異常値」と考えられるビデオ映像や脳波または各患者にとって重要な事象を確認し、所定の計画書に従って適切な医療提供者に連絡する責任を負う。
    • リアルタイム・モニタリングに専任で対応する神経診断技師は、各患者について詳細なイベントログを記録する。
    • イベントログは、神経科医がオンサイトおよびオフサイトでデータを閲覧する際に利用できるものとする。
    • 時刻が記録された連続イベントログのほか、イベントログの各キーカテゴリの最も新しいエントリーがスプレッドシート最上部に表示される。これにより、検査技師は医師と看護師に重要な事象に関する情報をより迅速に提供することができるとともに、シフト交代時の患者の引き継ぎの際に、検査技師間で事象の正確な概要を共有することができる。
    • イベントログの詳細な例については、図1 を参照のこと。
    • このモデルでは、検査技師はすべてのデータの管理(プルーニング、アーカイビング等)についても責任を負う。
  • オンサイトで週40 時間、1 日24 時間週7 日体制の残りの時間はオンコールで自宅待機する神経診断技師が、検査の開始と中止を行うとともに、検査中の電極の完全性を維持する。
  • このモデルでは、現在、患者のケアを行っている看護師も、オフサイトでリアルタイム・モニタリングを行う神経診断技師の助けを借りながら、簡単な電極の装着やトラブルシューティング等の支援を行う。
  • 連続ビデオ脳波モニタリングには専任のIT アプリケーション・サポート・アナリストが必要である。
  • 定期的な連続ビデオ脳波モニタリングを計画する場合は、神経診断技師臨床教育者が必要である。
  • 同時にモニターするベッドの数が増えれば、インフラを支える人材が必要となる。特に、転帰、品質およびリスクの領域では、医師へのフィードバックを最適化し、根拠に基づく医療を確保するため、品質の維持とデータ管理のための人的支援が必要となる。
  • 1 日24 時間週7 日体制の神経診断技師の業務シフトは看護師の業務シフトによく似ている。すなわち、12.5 時間×2(12 時間労働+30 分の休憩)のシフトで24 時間を対応し、交代時には患者の安全な引き継ぎのため30 分の重複時間を設ける。あるいは、8.5時間×3 のシフトで24 時間を対応することもできるが、12 時間×2 のシフトの方が望ましい。夜間と週末のシフトには、通常、報奨金が支払われる。
  • 検査技師が1 日24 時間週7 日体制でリアルタイム・モニタリングを行うための標準モデルは今のところ存在しない。このため、FTE(full-time equivalent;正規職員換算)は変動予算から外され、表1 に示す人員配置比率で固定予算に組み込まれる。当該サービスに関する24 時間ビデオ脳波検査課金コードは、当該部門における変動FTE 生産性の算定から外される。

(a)このモデルにおけるFTE の内訳、業務内容および配備人員の資格経験等については表2 を参照のこと。

  • このモデルでは、オフサイトのサービスが追加インフラ(専任のIT サポート、臨床教育等)を提供することも一般的に行われる。
  • このサービスは、たとえば、同時にモニタリングできる患者数に基づく患者/日割りまたは月割りの課金で提供される。
  • このモデルでは、病院側が院内およびオンコールの検査技師や備品・装置を提供したいと考えるかもしれないが、オフサイトのサービスを利用して他のすべてのインフラおよびサポートを賄う方が通常、費用効率が高く、他の理由からも有益である(院内 ITを利用することは必須であるが、オフサイトのサービスを利用できるのであれば、専用とする必要はない)。

     

     

     

     

    • このモデルにおけるFTE の内訳、業務内容および配備人員の資格経験等については表2 を参照のこと。

c)暫定的な人員配置モデル

  • ICU にて1 日24 時間週7 日体制のリアルタイム連続ビデオ脳波モニタリングに移行する間、暫定的に使用するモデルでは、1 日24 時間週7 日体制で連続ビデオ脳波を記録し、後日そのデータを見直して患者のケアに修正を加えるという方法をとる。
  • オンサイトの神経診断技師は、通常の業務時間は院内で検査の開始と中止を行うとともに検査中の電極の完全性を管理し、1 日24 時間週7 日体制の残りの時間はオンコールで自宅待機する。
  • 現在、患者のケアを行っている看護師は脳波の量的トレンドをモニタリングし、臨床的に重要と考えられるパターンがあれば検査技師および/または医師に連絡して確認してもらう。看護師は、オンコールの検査技師の助けを電話越しに借りながら、簡単な電極の装着やトラブルシューティング等の支援を行う訓練を受けている場合もある。
  • 連続ビデオ脳波モニタリングには専任のIT アプリケーション・サポート・アナリストが必要である。
  • このモデルでは、看護提供者および神経診断技師にトレンドグラフの見方、脳波の判読、トラブルシューティング等に関する教育を継続的に提供するため、神経診断技師臨床教育者が不可欠である。
  • 同時にモニターするベッドの数が増えれば、インフラを支える人材が必要となる。特に、転帰、品質およびリスクの領域では、医師へのフィードバックを最適化し、根拠に基づく医療を確保するため、品質の維持とデータ管理のための人的支援が必要となる。

     

     

     

     

    • FTE の内訳、業務内容および配備人員の資格経験等については表3 を参照のこと。

 

3)その他の指示事項、疑問点等

a)神経診断技師リアルタイム・モニタリング・モデルの利点

  • 個々のてんかん発作および非てんかん発作をリアルタイムに確認し、その場で治療の意志決定を行うことができるため、ICU で連続ビデオ脳波モニタリングを行う場合は最適な実施モデルであると考えられる。
  • ICU 患者にリアルタイム・モニタリングを行い、それに対応する臨床的意志決定を行うことの有用性を確定するためには、さらなるデータが必要である。
  • このモデルを使用すれば、看護師は患者の看護に集中することができるうえ、看護師を新たに訓練する必要がなく、看護師と患者の比率を変更する必要もない。

b)暫定的人員配置モデルの影響• ICU の業務に加え、連続ビデオ脳波による事象の確認や電極管理の責任を負うことが看護提供者に及ぼす影響を評価するためには、さらなるデータが必要である。

  • このモデルでリアルタイムの事象の検出に利用されるトレンドグラフや自動イベント検出機能は不完全で、偽陽性や偽陰性のイベントがよく発生する。

     

     

     

     

    • 偽陽性イベントは、オンコールで待機する神経診断技師および/または医師に対する過剰な呼び出しや、不必要な薬剤の使用を招く恐れがある。
    • 偽陰性イベントは、治療変更の機会を失う、または遅らせる恐れがある。
  • 暫定的人員配置モデルを使用することにより、患者はICU の連続ビデオ脳波モニタリングにより得られる利益の、全部ではないにしても、その一部を享受することができる。

 

1 インディアナ州インディアナ大学ヘルスの神経テレメトリー・モニタリング人員配置モデルを参考に作成した。

 

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カテゴリー: 「ベッドサイドでの脳波パターン:成人患者への持続脳波モニタリング」, 特集